2012年9月 “「国境なき科学」プロジェクトに思う”

 8月17日~29日、鹿児島大学の仕事で学長とともにブラジルに行った。アマゾン河口の街ベレンと、ここから300キロ離れたトメアスー移住地、そしてブラジリア近郊のセラード開発の現場の視察である。目的は、昨年から実施している学生南米研修の候補地拡大の検討と、アマゾナス連邦農科大学との学術交流・協同研究の可能性を探ることであった。 

  このアマゾナス連邦農科大学や、ベレン、サンパウロの領事館で耳にしたのがブラジルの「国境なき科学」プロジェクトである。このプロジェクトは、理系分野のブラジル人学生を5年間で約10万人、ブラジル政府の奨学金で国外に留学させ、ブラジルの科学技術発展の促進と競争力の強化を図ろうとするものである。日本も、年間約1千人のブラジル人学生を受け入れることが、両国の外相会談で合意された。 

                           【アマゾナス連邦農科大学で】

  翻って我が国の教育政策。子供手当や高校の授業料免除で、果たして科学技術の発展や競争力強化につながるのであろうか。

 世界経済フォーラムの競争力リポートによる数学・科学教育の質のランキングでは、1位はシンガポールで日本は27位である。また、2050年には日本は国内総生産の規模でインド、ブラジル、ロシアに抜かれるという予想である。

 教育を変え、競争力を強化するには20年、30年の歳月がかかる。長期的な視点から国力と技術力を考え、危機感を持って科学技術の研究開発を戦略的に取り組む必要があるように思う。

 大学進学率が50%を超える国は異常である。2割のエリートを、その中から更に2割の超エリートを作って行く。その育成に投資するように教育政策を転換するべきではなかろうか。抜きんでたリーダーが排出する。先端技術で、断トツの位置を確保する。さらに理想を言えば、国民は「仁」「義」「礼」「信」「智」をわきまえ、世界のモデルになる国、それが日本!

                                                               

                                                   

 

【アマゾン河で】

         

                                                      ラーニング・システムズ株式会社

                                                        代表取締役社長 高原 要次