2018年7月 「生産性向上 覚悟しよう!」

 「働き方改革関連法案」が衆議院、参議院で可決され、成立した。その項目は・残業時間の上限規制 ・年次有給休暇の取得義務化 ・勤務間インターバル制度 ・同一労働同一賃金。この中で“高度プロフェッショナル制度”が物議を醸している。勿論、法整備としてこの問題を重要視するのは理解できないことはない。しかし、より本質的なことは、その背景となる我が国の構造的な問題である人口減少・少子高齢化に対しての国家レベルでの問題解決である。つまり「生産性の向上」。

 「生産性」とは、生み出された成果・価値と、その成果物を生み出すために投入された資源の比率であり、生産性=アウトプット(得られた成果)÷インプット(投入資源)で表せる。この「生産性」を上げるために個人レベル、企業レベル、国レベルで取り組んでいる。

この「生産性向上」、個人・企業レベルでは ・業務改善 ・目標管理やPDCAの徹底 ・見える化 ・ITの活用 ・モチベーションアップ 等の取り組みを行っているところが多いが、これは効率化であって、生産性向上とは言い難い。大規模なリストラクチャリングやイノベーション、新規事業の創出等で持続的に付加価値を高めなければ生産性向上とは言わない。

国レベルで「生産性向上」を考える時、「新・生産性立国論」(デービッド・アトキンソン著)という本が大変参考になる。結論は、生産性を向上し付加価値を上げる以外にこの国の取るべき道はない、と。

 氏によれば、「生産性=1人あたりのGDP」あり、これは世界の常識。現行の社会保障制度を維持する必要があるとして、仮にGDPが2015年~2060年まで536兆円で変わらないとすると、2015年の生産性(1人あたりのGDP)は422万円、2040年は499万円(1.18倍)、2060年は617万円(1.42倍)になる。これを、生産年齢人口でみると2015年696万円、2040年925万円(1.32倍)、2016年1,211万円(1.74倍)である。

 生産性を上げないことには、この国は成り立たないのである。しかも、これは世界経済は膨らんでも日本経済は45年間横ばいであるという前提である。また実際には高齢者の比率が格段に高くなり社会保障費は増大する。それを勘案すれば、その倍率がかなり大きくなる。その際、国がとるべき生産性向上策は

  ①  企業生産性の低い零細企業は淘汰に任せ、企業数を減らす

  ②  女性の専業主婦は許されず、男性と同一労働で全体の付加価値を上げる

  ③  “高品質低価格”が労働者の低賃金となっており、賃金を上げて需要を増やす

 OECDのある調査によれば、日本の労働者の質は世界最高と言われている。しかし、労働生産性は20位(35か国比較)、先進国では最低。その責任は誰にあるのか・・・。

人口減少・少子高齢化社会は随分以前に想定されたことであり、もっと早くこの事態を打開する政策はとれなかったのか・・・。個人も企業も、自分の生活のみ自社の利益のみに関心があり、この国の将来に対する危機意識がない・・・。

 もう、待ったなし。覚悟しよう!

 

                                                         ラーニング・システムズ株式会社

                                                           代表取締役社長 高原 要次