“人間は考える葦である”とは、17世紀のフランスの思想家パスカルのパンセの中の言葉である。「人間は自然のうちで最も弱い葦の一茎にすぎない、だがそれは考える葦である」として、自然において脆弱だが思考する存在としての人間の本質を表現したものである。
「成長」とは、環境の変化に対する正しい適応と定義されるが、この正しい適応とは「考える」そして「選択」し・「行動」して「変化」していくことであろう。人はしっかりと考えることができなければ、成長できない。
この「考える」訓練を「教育」として行うのであるが、学校教育においては、それが十分かどうかは甚だ疑問である。知識として、いわゆる答えのある問いに対して「パターン認識」を学習し、正解を探す「勉強」を行っているように感じる。パターン認識の数を多く覚えた方が、出された問題に対してのヒット率はよくなり、試験の点数はあがる。このパターン認識の学習はそれなりの意味があり、病気の治療や、事故や災害の対策には効果を発揮する。しかし、まったく新しい病気や、500年に1度の災害に対しては、所謂「想定外」ということで解決には至らない。社会においては正解のない問題に対し、そのたびに自分たちが最善と考える答えを出して実行することが求められている。
ではビジネスでは、どのような「考え方」をすればよいのか・・・。そのポイントは3つ。①「根源的にものを考えていく」②「長期的にものを考える」③「多様性を持ってものを考える」である。「根源的にものを考えていく」とは、そもそもの目的に訴求することであり、より本質に迫ることである。トヨタの「なぜ」を5回問う、というのは効果的である。「長期的にものを考える」とは、時間軸を長くし、歴史を知る、その上で未来を予測する。また、将来を見据えて今を変えることである。「多様性をもって考える」とは、複数の視点や立場でものを考えることであるが、自分軸がないとただの紹介コメントになってしまう。この3つのポイントは個別に存在するのではなく、相互に関連しながらその思考を上昇させ、深化させ、前に進める。
更に言えば、「行動」が「考える」前提である。単に机上の思考ではなく、“仮説・検証を繰り返す”、“やってみる”ことで「考える力」は身に付く。
ラーニング・システムズ株式会社
代表取締役社長 高原 要次