先日、以前から計画していた母の卒寿のお祝いをしました。
「お祝いの食事で、もうお店に予約してるのよ。行ったらとっても楽しいから!」と、当日まで毎日誘い続け、やっとお店に行った私たちでした。外食に消極的だった母でしたが、テーブルの上に並べられた料理の器や盛りつけに感激し、お店のおもてなしに喜んでいました。特に“宝楽割り”と名付けられた、福を呼び厄を払うと言われる料理が出てきた時は、ちょっとはしゃぐ可愛い母がいました。中にお料理が入っているのですが、塩で固めた外側のフタを、本人が木づちで叩き割るという趣向を凝らしたものでした。
叔父や叔母によると、母は子供の頃から字が綺麗で、利発だったそうです。若い頃は役場で働いていて、周りからの評判も良かったそうです。そんな母から、学校の作文の添削をちょくちょくしてもらった記憶があります。他人にも隔てなく優しく、私が小学校の頃、親のいない黒人の友だちを家に連れて来たときは、おやつをたくさん作ってくれました。また大学時代にオーストラリアとフランスの留学生がホームステイに来てくれた時も、英語は話せないのに私より彼女たちと仲良くなっていました。母の生き方から学ぶ事がたくさんあり、尊敬できる人生の先輩だと思います。現在、週に2日デイサービスに通う母は、最近はよく俳句を作っています。今回帰省した時も、外の景色や事象に興味を持ち、ノートに俳句や詩などを書き留めていました。今でも字は上手です。
卒寿とは満90歳の名称です。年齢を重ねるとその年に応じてさまざま呼び方がつけられていて、長寿祝いは特別なお祝いとして、長生きをしている人を敬い、感謝する意味を持っています。
良く知られているのは、名称で言うと、60歳が還暦、70歳は古希、77歳‐喜寿、80歳-傘寿、88歳-米寿、90歳-卒寿、99歳-白寿、100歳-百寿。その後は108歳-茶寿、111歳-皇寿または川寿、112歳-珍寿、118歳-天寿、120歳-大還暦、等。そして当てはめられている名称の漢字には、ちゃんと由来があります。ちょっとこじつけかなとも思いますが、調べてみると面白いものです。そして今回初めて知ったお祝いの名前が66歳の緑寿。これは2002年に日本百貨店協会が提唱したものです!数え歳の66歳が現役世代と高齢世代の節目となる年齢で、新たな社会活動への参画を促すスタートラインに位置づけられるからだそうです。
平成27年の日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳で、ともに前年より長生きになっているそうです。今の会話を忘れたり、杖を使って前かがみになって歩く母ですが、積極的にお便りも書いてくれますし、俳句作りを再開する前向きな姿に刺激を受けて帰って来ました。
(原口佳子)