2016年1月 『問題解決の落とし穴』

 先般、南米を訪問した。8回目のブラジル、5回目のアマゾンであるが学び多き旅であった。訪問の主目的は「ブラジル日本語センター設立30周年記念式典・シンポジウム」への参加だったのだが、移住した多くの先輩方を訪ね、大きな刺激を受けた。

 1953年に各大学の移住研究会・中南米研究会が集って「日本学生海外移住連盟(学移連)」という組織をつくり、最盛期には北は北海道大学、南は琉球大学まで56大学が加盟していた。そして1959年から「南米学生実習調査団」(後に海外学生総合実習調査団に拡大)として各大学から選抜して、毎年10人前後の学生を一年間南米に派遣していたのである。この派遣された学生のうち約半分は、卒業後再度南米に渡り移住者として彼の地での生活を開始した。

 私は、1975年第16次南米実習調査団(第6次海外学生総合実習調査団)の一員としてブラジルに派遣され、研鑽を積んだ。だが、残念ながら移住するに至らず、その後40年日本に住んでいる。

 移住した先輩には、サンパウロ州の奥地で牧場を営む者、アマゾン河口の街ベレンでレストランを開いている者、ブラジルの県人会の会長さん、有機栽培のコーヒー販売の後、今は日本会議のブラジル代表者等、多くが異国で試練を重ねて種々の仕事をしている。皆さん一様に元気、流石に体力は年齢相応だが気力はまだまだ若者、凛として生きていらっしゃる。

 移住した先輩方と日本に残った我々の違い、移住し自分の夢を実現しようとした生き方と、移住せずサラリーマンを生きた者の違い、それは「問題を乗り越えて今がある」か、「問題に対処して今まで生きてきた」かである。

 例えば、ブラジルで牧場をしようとすれば、まずはポルトガル語が喋れるようにならなければスタートが切れない。ブラジルの法律やルールを知らなければ土地は買えない、人を使う術(マネジメント)を身に付けなければ牧童や労働者を使えない・・・。すべて乗り越えないと問題が解決しないのである。かたや日本、多くがサラリーマンであるが、問題解決といいながら、表層的な手当で終わり、本質的ことを避けたり、すり抜けたり、先延ばししたり、文字通り対処することで生きてきた。つまり現状での不具合を無くすことが問題解決なのである。

 「問題」とは現状と目標との差である。夢や志(目標)を持たず、日々の生活(現状)の不具合だけをクリアーしていく人生は面白くない。問題解決しているつもりが、人生という大きな問題を避けて通っているのではないだろうか・・・。

                                                            ラーニング・システムズ株式会社

                                                            代表取締役社長 高原 要次