2015年7月 『ダイバーシティ・・・』

 最近、社会においても企業においても“ダイバーシティ”という言葉をよく耳にするようになった。“多様性”という意味であるが、「幅広く性質の異なるものが存在すること」「相違点」と訳される。そもそもは「生物多様性」「植物多様性」等自然科学の分野での言葉であろうが、社会科学・人文科学の分野でも「文化多様性」「地域多様性」等頻繁に使われる。

 企業においては、変化する環境の中で継続して成長していくためには、多様化する顧客ニーズに対応していくためには、またグローバルなビジネスを展開するためには、というテーマに対しての基本的な課題として「ダイバーシティ」が唱えられる。

 今年の我が家の“田植え”に10人の外国人が手伝いに来た。インド、ネパール、インドネシア、中国、韓国、ウガンダ、アルゼンチンの7ヶ国の留学生たちである。まさに多国籍。生活スタイル、宗教、価値観など多様な人たちである。彼はヒンドウ教だから牛肉は食べない、彼はイスラム教だから豚肉はダメ、彼は牛肉も豚肉もダメ。更に料理する鍋は別々に、バーベキューのコンロも別々に・・・。概念としての「多様性」は理解がきるし賛成だが、現場での「多様性」対応は難儀なものである。

 食事の後は“お国自慢プレゼンテーション”、世界地図を示しながら自国の地理や地形、歴史、宗教、生活、そして誇りに思うことを話してもらったが、その国の「違い」が面白い。さらに、日本に留学した理由、将来やりたい仕事、趣味等、個人の「違い」が興味をそそる。

 わが国は、多民族国家ではなく単一民族である。宗教や文化も含めてほぼ日本国中同一である。一人ひとりが「違う」ということが前提ではなく、みな「同じ」が前提で事が進む。満場一致や全員参加、平等で仲良くが尊ばれ、異見や異質は嫌われる。

 しかし今、国も企業も単一ではない、国内・海外で二分してものを考えるのではなく、それぞれの国や地域の「違い」を鑑み、いい関係を構築して外交やビジネスを展開して行かなければ、いい結果に結びつかない。男性、女性のそれぞれを認める、個人個人を認める、そして許容する。

 しかし、「ダイバーシティ」で多様性を唱える前に、それぞれの組織や個人が「アイデンティ」を持っていなければ中身がなく、「多様性」が成り立たない。

 

                                                           ラーニング・システムズ株式会社

                                                             代表取締役社長 高原 要次