2014年9月 “ 心に残る優しい言動 ”

 帰省先の鹿児島で乗った車内の出来事です。電車に乗っていると運転手さんが中年の女性に「次で良いから、今度乗ったときに一緒に払ってくださいね」と声掛けをしています。お礼を述べたその女性は、今度は、私の隣に座っている女性にお礼を言っています。「有難うございます。せっかくいただいたけど、このお金はお返しします。運転手さんが、今度一緒に払えば良いと言われたから・・」ともう一人の女性にお礼を言っていました。この中年の女性は小銭がなく車内で両替しようとしたのですが、両替機が故障だったようです。困っていたところ、隣に座っていた女性が何の躊躇もなく運賃を差し出したのです!「お互いさまですから使って下さい・・・」

 私は鹿児島生まれ。小学校3年生から大学卒業までの14年間、市内を走る電車で通学しました。最初の登校日、私の降りる駅が終着駅とは知らず、「ここで降りますから!」・「降ろしてください!」と声を張り上げると大人の人は優しく道を開けてくれました。今では赤面する思いです。中学・高校時代は、重い通学カバンを下げていると、座っている人が必ず「持ちましょう」とカバンを膝に置いてくれたし、年配の人が乗車すると、さっと席を立って譲るのが当たり前でした。現在はというと、ズボンを腰まで下ろしている、ちょっと強面の男の子が、お年寄りに席を譲る光景をよく見かけます。鹿児島はまだまだ捨てたものじゃないなと思いました。私も良いところで育ったなと故郷に感謝です。こういう場面に出くわすと本当に心が和みます。

道を我が物のように歩く’‘自分だけの道だと勘違いして車を運転する’‘電車に乗っても席を譲らない、大きな声でお喋りする’‘エレベーターで、他の人に代わって「開」「閉」のボタンを押してもらってもお礼を言わない’等々を見聞きする事が増えてきました。残念なことです。

  現在のわが国は、自分勝手で自己中心的な考え方で、行動し過ぎているような気がします。落ち着いた態度、節度、言葉づかい、周囲への気配り、気遣い、謙虚さ、礼儀正しさなどの心に残る優しい言動はどこで養われるのでしょうか。家庭や学校、社会に於いて教育の見直しが必要なのではないかと思うのです。

                                                                                                                                                                                  (原口佳子)